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甲鉄城のカバネリ最終回感想 美馬は何をしたかったのか?  

いきなりですが、『甲鉄城のカバネリ』の最終回の感想です。

今季、『カバネリ』は『マクロスΔ』とともに一応注目はしていて、いちおうは見てました。
てか見させられました。友人の勧めで。
分析ごっこは本気でやるとめんどくさいんで置いておきます。
作品の作り込みがすさまじいので時間かかります。お金もらえるならやるけど笑


カバネリについては、わからなかったらインクエッジさん(@02Curry)のツイートをひたすら見ていくと、物語の構造とか美馬の心情とか、相当程度の基本学習ができると思います。

今回の私の感想は主人公のライバルにしてラスボス・天鳥美馬について。
ずっと大好きで見るたびに切なくなるキャラだったのですが、まあ、期待通りというか。
ひっじょーにイイカンジで物語の好感度も上げに上げにあげてくれました。Viva様!ビバ様!

彼はどういうことを考え、何をしたかったのか?

彼を何となく好きだったり、彼を見ていると切なく感じてもやっとしている方に。
天鳥美馬という男が身命を賭して求めたものを、言葉にしてみます。


そうそう、コミケにスペース出せることになりました。
1日目金曜日(8月12日)、西b36aになります。縁起物のしゃもじとか団扇とかを出します。
7月15日までにご連絡いただければ名入れできます。



結論から言うと、美馬が本編を通じてやりたかったことは「鋼の心を貫いた人間に出会う」ことです。物語のキャッチフレーズそのものを求めた男が、美馬。
その目的のためだけに、彼は命をかけて他者を試し続け、最後に成就させています。

なぜか?
「鋼の心」以外のすべてのものは彼にとって手に入れるチャンスがあり、それゆえに価値がないと判断されたためだと思われます。


まず、インクエッジさんの美馬観を紹介します。
美馬の興味の対象は一貫して”恐怖に曝された時の人間の本性”である。
つまり、恐怖に直面した時、それでも己を貫けるかどうか?
貫くことこそが人間性であり、美馬はそれを見たがっている。
だから、カバネ化から自力で戻ってきた生駒のことは相当のお気に入りで、手を替え品を替え試している。


というものです。
物語のキャッチフレーズ「貫け、鋼の心を」とも関わってきそうですね。


「美馬をどう扱うかで物語の価値が決まるな」と思いながら見ていた私も、なるほどなでした。
11話、12話を見ていても、ここは一貫していたように思います。
というより、「鋼の心」というテーマ、つまり生駒の成長が物語の軸にあり、そのために美馬、菖蒲、無名、来栖あたりのキャラが配置されたとも言えます。

では美馬は何をしたかったのか?ですが、これは先に紹介したインクエッジさんの解釈が全て。
「恐怖によって暴かれたあとの人間性を見る」です。

もう少し言うと、彼は見つけて欲しくて、見つけたかった人間なのだと思います。
見つけて欲しかったものは、ヒトの中にいる「恐怖」そして「臆病者」。
見つけたかったものは、カバネリとしての生きる(生きた)意味、ないしは死に場所。



なんでかなーと思うと、美馬は劇中で唯一、カバネ問題の完全解決が可能だった人間です。
彼の討伐軍は、カバネに完全勝利しかけています。
幕府の裏切りさえなければ、美馬はカバネを封じ込められていた、と語られていました。たしか10話。
世界的にカバネが猛威を振るう中で、人類の最初の勝者になりかけていたのが美馬なのです。

生駒が6話かけて見つけ、菖蒲がロビー活動をして広めようとしている「カバネ駆逐」なり「カバネのいない平和な世界」なんてものは、美馬にとっては「採らなかった選択」にすぎません。
生駒たちの夢想する未来は、美馬にとっては通り過ぎた過去に過ぎないのです。

また、美馬の討伐軍、絶望的な状況からよく生き残れたなーと思ったのですが、その理由も今回で明かされました。
なんのことはない、美馬自身がカバネリだったわけです。それも、相当強いカバネリ。


この彼の強さと、彼の出自を考えると、彼の行動も納得がいきます。

美馬は幕府の世継ぎです。容姿にも軍才にも恵まれています。
つまり、何でも最高レベルでやることを許された環境に生まれた人間です。
それとは別に、彼は対カバネ戦を通じ、本人の実力と努力でも何でもできる力を手に入れています。
だから、彼はカバネを制することも、人を束ねることもできます。
討伐軍を率いてはカバネを封じ込めかけ、味方に裏切られて壊滅しかけても結局生き残りました。
カバネのメカニズムを解析もしていたわけで、彼が本気でカバネ掃討をやれば今からでも多分余裕で勝てます。

つまり、美馬は救世主にも王にもなれる人間です。
みんながお米をおなかいっぱい食べられる世界も、彼だったらおそらく余裕で作れます。
生駒たちが「いつか叶えばいいな」程度に思っている願いは、美馬には具体的に実現可能な目標のひとつにすぎません。

でも、その目標を誰の何のために叶えるのでしょうか?
叶えた世界で、彼自身は満たされるのでしょうか?
劇中で示された答えは、Noです。

人が容易く恐怖でおかしくなることを、美馬は知っています。
上手く行っているものをわざわざぶち壊したり、恐怖にかられて、仕事をちゃんと頑張っている人を背中から切ったり。
「平和な世界」を作っても、そこに彼が望む「強者」はいません。
強者とは「恐怖に揺らがない者」とインクエッジさんが解析していましたが、私もそのように思います。
ああうん、美馬の部下たちは洗脳には揺らいでる気がするんですけどね…

カバネリ美馬の居心地の良い世界は、滅火やら狩方衆やら、カバネが飛び回る世界でも恐怖に動じず人間性を保ってられる強者が強者である間だけ生きていられる世界です。


また、人間は容易く壊れる。
40万の討伐軍が壊滅する過程で、忠勇の士(カバネに勝ちかけたのだから精兵だったはずです)がカバネになって同胞を食い殺し、自分にも襲いかかってくる状況にも何度も何度も直面したはずです。何人も、自分の手でも殺したはず。
ありていに言って、生き地獄だったと思います。

今回の冒頭で、生きるもののいなくなった玉座で、彼は言います。

「俺たちヒトは惨めな生き物だ。怖いから拒絶し、理解できないから攻撃する。
 ヒトの臆病が戦いを生むのだ。
 わかっている。。。こわいのだろう?お前たちも。」


美馬にも恐怖があるのだけど、人々は彼に英雄と未来を見る。
かろうじて滅火が美馬の心奥に近づきかけましたが、彼女ではカバネリ・美馬には今一歩届きませんでした。
なにより、滅火は美馬を信奉する側の人間です。美馬に対して殺意を抱きえない。

ー美馬のカバネリの力を引き出した上で殺せるほど強く、かつ、恐怖にも殺意にも飲まれない存在ー
美馬が会いたかったのは、そういう相手だったのではないでしょうか?
言い換えると、その相手は自分の戦いを意味を持って終わらせてくれる相手です。


面白いのが、今回の生駒と美馬のラストバトル。
生駒の背後に美馬が忍び寄って突きを繰り出した時、生駒は反応できていません。
でも、美馬は生駒の心臓を貫いておらず、なぜか切っ先がかなり下を向いている。
美馬の突きが正確なのは、これまでで何度か示されています。彼はまず外さない。
実際、左手を飛ばされた後でも彼は生駒を正確に銃撃しています。

kabaneri12_002.jpg


でも、このときは刺していない。振り向いて撃ってきた生駒に対し、反応せずそのまま攻撃を受けています。
いやドヤ顔でセリフ言ってないで反応しろよ。

kabaneri12_001.jpg


美馬には生駒を殺す気があったのでしょうか?私には、あったとは思えないのです。
美馬の腕ならカウンターがかけられるだろうし、そもそも美馬は動いてすらいないので。
他方、生駒も生駒で、美馬の心臓は貫けていません。狙いが逸れて腕を飛ばしたにすぎません。

kabaneri12_003.jpg


美馬と生駒のラストバトルは、一見、生駒が勝っています。
じっさい美馬の邪魔を排して無名を助けられているので、生駒は目的を果たせています。

でも、彼は美馬を殺害できていません。
他方、美馬は生駒を「あえて」殺さないでいるのです。
となると、この戦いは実は、美馬にとっても満足のいく結果を得られていたのではないでしょうか?
つまり、win-win。





では、「見つけたか、臆病者を。」と言った美馬は、何に満足したのでしょうか?

kabaneri12_001.jpg

臆病者=美馬自身、と思ったのですが、多分違います。
彼自身が臆病者と評していた少女、無名だとは思います。
でもこれ、今回の12話冒頭のセリフにもかかるのではないでしょうか。
つまり、無名であり、同時に、無名に象徴される「臆病で醜いヒトの本質」
それが、臆病者。

なぜなら、生駒は怨敵が真後ろにいるにも関わらず、無名(助けたい相手)に気を取られ、その敵に全く気付きませんでした。
カバネになりかけ、殺意に覆われそうになった土壇場での行動です。(10話でタクミが殺された時は違う反応をしています)

ーカバネの本能に負けず、怨敵への恨みにも曇らず(つまり恐れに負けず)、他者を生かそうとする心ー
これこそ、美馬がずっと探し求めて「見たかったもの」なのではないでしょうか?
メタ的に言うと「貫き通された鋼の心」です。

このあと彼は無名にトドメを刺されますが、この時の美馬の行動に殺意があったのかどうか?
いや、あるのでしょうが(この人は子を谷に蹴落とす獅子だと思います)、ハッパをかけているように見えてならないのです。
直前に白血漿を打ち込んでいるわけで。
生駒が生きてくれないと意味がないから、珍しく感情をあらわにする。

kabaneri12_004.jpg

「戦ってみせろ!」は「恐怖と戦ってみせろ!」でしょうし、「(死ぬな!)生きてみせろ!」に他ならないと思います。



生駒を生かすことは、美馬が今まで(おめおめと)生きて戦ってきた意味でもあります。
「世界を救うこと」や「世界を救うことを放棄すること」以上に価値がある、美馬が全存在をかけて追い求めてきたものです。

ーなんのために俺は生きてきたんだ?ー
あるいは
ー恐怖の前では人間なんて、所詮wー
といった問いに対しての、答えになりうる意味。
その合格点を初めて出した相手が、生駒だったのではないでしょうか。

美馬的には、それは世界を救うことよりも価値があることです。
なぜなら、どんなに救われようと、恐怖によって容易く崩壊するのが人の世界だから。
美馬にとってのラスボスは、ヒトの心の中の恐怖です。

だから、世界を救うに足るかを美馬は命がけで試し、合格した生駒に世界を託した。
でもあると思います。


そしてもう一人、美馬が合格点を出した相手がいます。


そう、無名。
つまり、「囚われた恐怖から生還できた人間」です。

無名も、美馬の言うなりだった自分や弱さを認めた上で、未来に対しての明確な自己主張をしています。
美馬を手にかけるんだけど、そこには愛がある。
これも、美馬が求めた「恐怖に打ち勝つヒトの姿」だと言えそうです。

だから、美馬が無名を見下ろす眼差しは、とても優しい。


kabaneri12_005.jpg


カバネリの物語は、時期や軌跡が明治維新になぞらえてあります。
いっぽう、スタート地点が出雲なので、モチーフとして日本神話もあるように思います。
神話としてみると、生駒が「英雄」で、美馬はその英雄を「試す者」と言えます。

生駒は物語を通じて民を導き世を救う「英雄」としての資質を開花させてきています。
その「英雄」には二面性があります。
ひとつは一騎当千の兵としての「英雄」。これは無名が師となりパートナーとなって支えていました。
もうひとつは人々を先導(扇動)する政治的存在としての「英雄」。これは菖蒲が実に的確に、生駒の技術や思想に政治的な力をもたせていきます。

こうして7話で生駒は「みんながおなかいっぱい食べられる世界」という未来をぶち上げるに至ります。
カバネに怯え「今」のことしか考えられない人々の前に、希望すなわち「未来」を語れる人間が現れたわけです。
生駒の語る「未来」の前に、対等の重さを持って人の心を揺さぶる人間が登場します。もちろん美馬です。
ここまで見てきたように、彼は「過去」からきた人間です。より正確に言うと未来にならなかった過去。

図にすると、こんな感じです(クリックで拡大)。

kabanerimoshiki.jpg



では、その過去の英雄はどうして失敗したのか?
キーワードがまさに物語のテーマ、「貫く鋼の心」の有無でしょう。
鋼の心は、大事な誰かを守りたい心。
生駒の志は、守れなかった後悔から始まります。

美馬も鋼の心を持ち得たのだろうのだけど、惜しいかな、彼には貫きたい先がない。
拒絶と恐怖で始まり、未来に絶望しているから。
(おそらく、彼は守れてしまって、守れたが故に拒絶された側なのだと思います。)

その意味では、美馬は時が止まってしまった人間です。
だから共に「馬」を冠する名を持ちながら、躍動感のある「生駒」に対し、既に完成されて静止している意味の字が当てられる。

その過去からの挑戦を退け、「英雄」生駒たちは未来を掴みます。

彼らはどこへ行くのか?
インクエッジさんによると金剛郭が函館らしいので、さらに北です。
実際の明治期の日本人の広がりもなぞっている感じです。

また、カバネリでは列車や日本列島が人体に見立てられていて、列車の中での生駒たちの位置や日本列島の中での鋼鉄城の位置がカバネウィルスに見立てられてもいます。金剛郭がまさに脳髄。
こうして見ていくと、地図上でも生駒の「鋼の心」が全てを貫ききった、ということで大団円になりそうですね。


恐怖に怯える心は、人同士を敵にする。そう悟ったのが美馬です。
恐怖に怯えなかった生駒だから、美馬は彼を生かす。


そんなところなのではないでしょうか。


美馬、なんだかんだで恵まれてると思います。
彼に命を賭して従う者たちに出会い、見たかった者を見ることができただけでも凄まじいのですが、
最後に見たものが怒りや憎しみに歪んだ生駒の顔ではなく、無名の愛(とおっぱい)に包まれて逝けたというのがね、もうね。


ということで、表題の答え。
美馬は人生を賭けて「貫ける鋼の心」を見たかった。
なのだと、私は思います。
鋼の心こそ、脅えておかしなことをやらかす惨めな人間を、惨めでなくさせる強さそのものだから。

美馬は、答えに巡り合えたのか?
最終話の今回の行動と表情で示されていると思います。

kabaneri12_001.jpgkabaneri12_005.jpg


ちゃんと巡り会えています。
恐怖に負けない人の心の輝きと、その輝きが起こした「恐怖に侵された者が人に戻る」奇跡に、彼は立ち会うことができました。


kabaneri12end.jpg


だから、EDのこの場面、美馬がこういう夢を見ていた、と言ってもいいんじゃないかなと私は思います。
そうです!無名のおっぱいの中で。


美馬が命をかけて挑み続けた問いは、最大限に報われたのだと思う。
10年苦しんで頑張ってきたのだから、このくらいあってもいいかなとも思います。


これ言いだすと面白いのが、カバネリ生駒がツラヌキ筒で唯一殺した人間は、美馬ではなくサハリ。
カバネリ美馬は、カバネリ生駒とカバネリ無名によって浄化されるような形で退治されています。

襲いくるカバネたちに対し、主人公とヒロインがどういう形で向き合い、どう倒したか?
この視点で見ても、カバネリはよくまとまっていると思います。








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2016/10/03 23:43 | edit

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