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ガンダムAGE感想 「神」と「救世主」  

前回で、ガンダムAGEのラスボスがなぜゼラだったのかを考えました。
ゼラこそが、今回の火星戦争の問題の縮図そのものだから。

関連して、ゼラにはもう一つの側面があります。
ゼラという存在がなぜ生まれたか、という理由でもある。

キーワードが「神」です。
AGEではいかなる勢力も宗教勢力を自称してこなかったけど、あえてこの単語を使います。


「神」も「救世主」も、人が希望を託し、縋るという点は同じです。
AGEには神という単語はほとんど出てきません。
代わりに頻繁に出てくるのは「救世主」。
じゃあ、救世主はどこが違うのだろう?


神と言っても、火星には神が何人かいます。
というのが、火星の人たちは「やるせない怒り」と、それに対して「縋った夢」という、言葉だけでは表現しきれない二つの強い思いを持っているから。
前者の象徴がゼラで、後者の象徴がゼハートです。
両者をコントロールしていた根源は、イゼルカントです。

でも、彼ら自身が神であろうとしたかどうかは、どうでもいい。元凶のイゼルカントも神ではない。
問題は、火星の民衆に共通する強い思いを具現化したシンボルとして、彼らが機能しているということ。
※ゼハートは実際にリーダーとして動いていたから、別の側面もあります。

ゼハートが討たれてもヴェイガンが引けなかった理由には、彼らの戦いの根本の動機になっている「やり場のない怒り」があるのではないでしょうか?つまり「見捨てられ、なかったことにされたうらみ」が解消されていないから。
ゼハートが死んでも、ヴェイガンは動揺こそすれ、逃亡兵も戦闘放棄する兵も出ていません。

恨みが解消されていないからといって、ヴェイガンの怒りを今の連邦にぶつけるのも筋違いです。
でも、泣き寝入りは絶対にできません。
何より命がかかっています。

この火星の声なき声に対して、人工的に神にされてしまったのがイゼルカントであり、ゼラでもあります。
イゼルカントは自分の責任感で突き進んだ部分もあるけど、火星の民がイゼルカントという逃げ場を欲していた背景もあります。
これは、イゼルカントがゼハートに言った「人々を照らす光になれ」に象徴されているように思います。
イゼルカント自身も、自分の仕事をそう考えていたのではないでしょうか?
光になった者は、照らされる者と対等ではありません。
本人は対等のつもりでも、照らされる側は光を仰ぎ見る。


ところで、火星の怒りの原因はマーズレイという環境の問題と、それに伴った政治問題です。
これは技術なり相手側の政治努力で解決は可能です。

でも、それが解決したとして、怒りがすんなり収まるのでしょうか?
それだけでは、人間はすっきりはできないと思います。これは歴史が示しています。
戦いの原因は「食えないこと」だったり病気だったり環境の変化なんだけど、そこから生まれた感情は別の生き物として暴走していきます。
だから、原因にも感情にも、それぞれ決着をつける必要が出てくる。
特に、感情の場合は「わかりやすい形」で。

最終話のイゼルカントとキオの問答でも示されています。
相手の理屈が正しいと分かっても、でも、引っ込みがつかないものがある。
だから、問答に敗れたイゼルカントが「赤く」切れる。
でもそれは独りよがりの怒りではなくて、火星の民の気持ちが託された怒りでもあります。
火星の民もまだ引くことを選ばない。選べない。


その意味で、火星の縋ってきた「神」イゼルカントは、どこかで打ち倒される必要があったように思います。
火星人は、イゼルカントの力と、彼の語る夢に希望を託していたから。
引っ込みがつかなくなった火星の夢に対して、どこかで引導を渡されなければならなかったように思います。
つまり、「神」を倒す儀式がどこかで必要になる。

でも、その「神」は力を失っていて、力を継いで暴走したゼラだけが残りました。
この神様のことは、もう火星の人は支持しません。利害が異なるからです。
でもゼラも火星の思いが託された存在なわけで、立場的にはMOEのゼハートと変わらない。
そんなゼラでも用済みになったら見捨てる。人間なんてそんなものです。

でも、ゼラは生きている人間です。だから「人間」ゼラを救う必要が出てくる。

このため、政治的な儀式としても、物語的な決着としても、キオの戦いが必要になります。
彼を救わないと、イゼルカントが戦いを仕掛けてきた意味もなくなります。

つまり、ヴェイガンを降すうえで「神殺し」の過程(儀式)が必要だったように思うのです。
より正確には「神を鎮めた」のがキオ。


よくありますよね。戦に敗れた人(たち)が怨霊になる。
だから鎮めるためにお祭りをしたり、お墓を建てたり。
洋の東西を問わず、どこにでもある現象。

そして人間は神様に序列をつける。それはその神を戴く集団同士の序列づけでもある。
戦って相手を取り込むことは、その場にいる人同士の決着だけではなく、相手が心に戴くものを序列化する過程でもあります。

キオが行ったのは、その「神の折伏」なのではないでしょうか?
AGEの制作スタッフがそこまで考えていたのかはわからないけど、戦いの根本になった「ひとのおもい」が具現化した存在が最後の敵、というのは説得力があります。




傍証としては、AGE-FXのバーストモードの位置づけがあります。
キオの思いの剣とも言うべきファンネルは、劇中で二つの使い方をされています。
思いを乗せて飛ばす、通常の使い方。
もう一つが、直接体にまとって突っ込んでいくバーストモード。

このバーストモード、キオは「人を殺しかねない力」として認識していて、劇中での使用をかなり強く自制しています。ゼハートたちを相手にしても封印を解かない。
キオの彼我の戦力認識が相当正確なことは、彼のファンネルの使い方で見て取れます。
バーストモードはヴェイガン最強のゼハフラをも凌駕すると、キオは認識しています。
ヒト相手には強すぎるこの力は、最後に「神」を封じるために使われました。

そのバーストモードの劇中での使われ方は象徴的です。
バーストモードに近い、もう一つの「アスノが体にまとう剣」タイタスがどう使われたのか、とも合わせると。

タイタスは、どう使われたか?
ヴェイガンの正体が明らかになる前段、ヴェイガン世界の「門を開く」形でタイタスが突撃します。
この時のタイタスの色は赤。怒りが乗った色です。火星人たちと同じ、やり場のない怒り。

age+14+15_convert_20120116225757.jpg


怒りをまとったタイタスが要塞アンバットのゲートに突撃し、扉をこじあけます。
そこから、実際に意思を持った顔の見える人間たちとしてのヴェイガンとの戦争が始まる。

では、その戦争の扉はどうやって閉じられたか?
同じく全身に意思の刀をまとったガンダムが、「神」にされた者を「人」に戻す形で最後のカタをつけています。
解体して人間に戻しているから、神殺しよりもより高度なことをやっている。

これは重要なポイントです。
ゼラの暴走を見たオクラムドが「ゼハートがいれば」と言っている。いれば、どうにかなったのか?
シドとの接し方を見る限り、ゼハートは「神は殺して乗り越えるもの」と考える人です。
だから、ゼハートだと神を殺してしまう。

でも、上で見てきたように、神を殺してしまったら同じことの繰り返しです。
神を降すという解決策もあるけど、キオはちょっと違う選択をしました。


ゼハートもキオも「ガンダムという力と青臭い理想を振りかざして理不尽な現実に立ち向かうもの」という点では同じです。
同じではあるのだけど、力の使われ方に差が出てきます。
その差が、彼らが育まれた「AGE(年月を重ねた人間のつながり)」の差でもあります。

だから、完全を求めるゼハートやイゼルカントに対し、キオは不完全な「人間」を受け入れることができました。
ゼハートやイゼルカントは、完全なるもののためにガンダムを使います。
けれど、キオは不完全を救うためにガンダムを使います。

確かに感情が具体的な形を持ったり、短時間で問題が解決するのはフィクションだからなんだけど、
「神に近いもの」を出したうえで、合理的な解決の道具としてガンダムを出してくるというのは、AGEは中々良い答えを出したなと感じます。

もちろん、現実的ではないんだけど。
だからこそ、「現実にあってほしい力」を注ぐポイントとして、私は納得できました。


もうひとつ、ゼラを「戦神」と位置付けても、一応説明が通ります。
戦神は中世以前の戦争でよく用いられた概念です。
戦争が始まる前に生贄をささげ神を呼び出し、勝利を祈願する。
呼び出された神は更なる血を欲し、呼び出した者たちは敵を屠ることにより神を満たします。
その代り、神は呼び出した者たちに加護を加える。
戦神を呼び出したのに肝心の戦いがなくなっちゃった場合、埋め合わせに犠牲が必要だったようです。

ゼラとヴェイガンギアを見返して、その話を思い出しました。
呼び出されたのに必要がなくなって、荒ぶっている神様。
だから、ヴェイガンギアだけがあのような「顔なき顔」なのではないか?そして異形の翼をまとうのではないか?

で、戦争においては割と相手の守護神との決着の話が出てきます。
滅びる王朝は神が殺されるか、軍門に降るかをしています。政治的な決着にじつは神が絡む。
人間集団の勝敗は、いただく思想なり神の序列化にも直結するから。


そう考えると、AGEは歴史ものであると同時に、いや、歴史ものであるからこそ、一つの神話の創生過程だとも言えます。

それは、ガンダム神話と言ってしまってもよいのかもだけど。


では、神と救世主はどう関わるのか。
前回の記事で少し書きました。
アスノの男たちはそれぞれが違う立場で、この「神を戴く民」と関わっています。
そして3人全員がその敵を一度全否定するチャンスを持つ。

フリットはプラズマダイバーミサイルで、「神」を生む温床になったヴェイガンを皆殺しにするチャンスがありました。
アセムはヴェイガンで希望を託される「導き手」ゼハートのガンダムレギルスを屠るチャンスを持ちました。
キオはヴェイガンの「荒ぶる戦神」ゼラに対し、彼を全否定しうる圧倒的な戦闘力で相見えます。

でも、いずれも「自分の意思で」力の行使を行いませんでした。
フリットは、「あいつら」の中に自分たちと同じ人間の苦しみを見ています。
アセムはゼハートも「つかめないものがある人間」だと見なしています。
キオは、イゼルカントやヴェイガン自身が否定したヴェイガンの民やゼラのことを「それも人だ」と喝破します。

神を戴きシロクロつける民に対し、それも人間だ、と、受け入れています。
救世主はあくまで人間です。
赦す、ではなく、上の3人全員が対象を同じ立場で受け入れてるのがポイント。

いや、キオとか人間できすぎてるけどね。
でも彼の場合、できすぎて青臭いのがそのまま欠点でもある。

これはガンダムAGEがなんでガンダムAGEというタイトルなのか?という問題に直結します。
AGEシリーズのガンダムも「救世主」も、多くの気持ちを具現化・代弁し、託されるという点では、火星の「神」たちやヴェイガンギア、レギルスと似た存在です。

しかし、明確な違いがあります。
それがAGE、つまり人間が時間をかけて何かを醸成していくこと。
3人が出したのは、AGE(時間を蓄積して人間が成長)したことで出せるようになった回答だからです。

AGEしているから、同じガンダムでも、レギルスとAGEシリーズはパイロットとの距離も劇中の位置づけも異なる。
AGEしているから、アスノ3人のガンダムが、最初に出てきたときと異なる姿で異なる役割を果たすようになる。
AGEした結果の人間関係があるから、欠点をもった誰かが暴走しても、他の人が助けてくれる。

スペック的には、アスノメンバーはゼハートやゼラに若干劣ります。
これは劇中で描写されています。

でも、ゼハートたちを救ったのは、欠点がある「人間」としての救世主たちでした。そこに神の完全はない。
ないからこそ、同じ目線で受け入れ、戦いが鎮められていく。


こうして改めて見返すと、AGEのタイトルの赤と青も面白いです。
厳しい環境とそれが起こした戦争に対し、やるせない怒りを表現した色が、赤。火星の色でもある。
それに対して人が理解し受け入れていくとき、青が掲げられる。これが地球の青。
それぞれがガンダムを掲げるけど、その内容も背景も異なる。

そこにAGEという要素が重層的に絡んでくる。
歴史になった三つの運命の背景には、別のものを掲げていた「歴史にならなかった運命」があります。

ガンダムAGEはフィクションです。
実際にはあり得ないものを、好きなように登場させることができます。
だから、歴史の背後にある人の思いのうねりのようなものも、わかりやすく可視化させてぶつけ合うことができます。

実際の歴史では、ゼラやらシドやらイゼルカントやらが都合よく出てくることはまずないように思います。
もっと生々しい欲があり、お互いに足を引っ張り合います。
組織も兵器も、機能があんなにまとまっていたり、性能が十全に発揮されることはまずないのではないでしょうか。

でも、歴史とは何か?戦争とは何か?人間とは何か?を単純な形にすると、AGEみたいなモデルはアリだと思います。
どこがどうフィクションで、どういう方向に「実際にないもの」の味をつけるか?
これは、「ガンダムAGE」という物語のタイトルが宣言しています。

だから、ガンダムAGEは「ガンダムとは何か?」の一つの答えも提示されているように、改めて感じました。


長くなりました。まとめます。
AGEではガンダムも敵のボスメカも、それぞれに託された人間たちの思いがある。
誰に何を反映しているのかを見て、その理由を考えていけば、ガンダムAGEがガンダムたちの戦争を通じて描こうとした「人間世界の普遍的な形」が見えてくるのではないか?


ガンダムAGEは意欲作だったと、私は思います。













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