ガンダムAGE感想 13:宇宙要塞アンバット 
2012/01/09 Mon. 11:02 [edit]
主人公側が初めてUE相手に本格攻勢に出ます。
あわせて、ガンダムシリーズの定番とも言える「ペガサスの形をした母艦」が登場します。
今週は物語の外でも大きな動きがあって、
アセム編の情報が本格的に出回り、主要登場人物、MSの設定画と年齢が公開されました。
また、「ココからが本編」、「物語の背骨はフリット」とのスタッフのコメントが発表されています。
以上のことを念頭に置いた上で見ると、ガンダムAGEという物語が一本の線につながりました。
考える余地はバリバリあって、面白いです。
改めて、とても楽しみなものに思えてきました。
熱さが残っているうちに一気に解説していきます。
まず、テクニカルなところからちょっとだけ。
ミンスリーで何をやっていたのかな、という話です。
恐らくはビーム霍乱幕の準備とフォーメーションの打ち合わせ。あとマッドーナのチームの手配でしょう。
露払いをパワーアップしたディーヴァで行い、それが駄目なときはサブがマッドーナのランチャー。
実際に取り付くのがドッズ持ったMS隊。目的は要塞最奥部まで辿り付く事。
(AGEシステムがあるので、勝てなくても最悪敵の情報を丸裸にすれば勝利同様になります)
で、あとは一回撤退しなければいけないときとか、連邦の追撃がきた、などのイレギュラー起きたときの段取りといったところでしょうか。
続いて、この記事のメイン、今回のキモについて。これは2つあります。
ひとつが、グルーデックがナマの感情を前面に出したこと。
もうひとつが、「僕(とガンダム)は救世主になれるのか?」という問いをフリットが立てたことです。
どちらもフリット編、そしてAGEシリーズ全体のテーマに大きく関わります。
13話の時点で、グルーデックが周到に準備していたUEへの反攻計画は実際に成果を出しつつあります。
今回で双方の損害比が逆転した可能性すらあります。
彼なりに必要な条件を揃えたので、実行に踏み切ったのでしょう。
だから、今回のグルーデックは今までと違って感情をむき出しにしています。
人事を尽くしきったから、もう感情を出しても大丈夫なわけです。
ならば、どういう人事を尽くしていたのか?それは物語のテーマにどう関わるのか?
それが、今回の記事のお題です。
まず、グルーデックはノーラの副司令におさまっていた人間です。
最初のUE襲撃の被害者でもあり、また、MS鍛冶としての「アスノ」は名が通っています。
つまり、フリットに近づいて取り込むこと自体を計算に織り込んでいた可能性が高いです。
また、ウルフは「なぜか」ディーヴァの中でわざわざ冷凍睡眠していました。これは偶然なのでしょうか?
本編13話までで、UE攻撃計画のためにグルーデックがしたことは
・ディーヴァ指揮権の奪取
・ディーヴァ指揮権の掌握
・ザラムからの支援の取り付け
・連邦追撃部隊の封じ込め
・連合軍としての作戦の立案と準備
・AGEシステムのディーヴァへの適用
です。
これらは、全部事前に情報を得て対策をとることが可能です。
「ディーヴァを奪ってUEの巣に殴り込みをかける」までが規定路線で、全部準備していたのではないでしょうか?
確かにUE襲来はランダム要素です。でも、それもフリットは予測していました。
フリットの能力と予言の精度も、グルーデックは理解していたと思われます(劇中でも、グルーデックはフリットを一貫して子供ではなく対等の同志として扱い、意見に真摯に耳を傾けています)。
一方、彼が直接手を下せないものが、フリットとAGEシステムという要素でした。
エウパの糾合、ドッズライフルの開発、フリットのXラウンダーとしての覚醒、ディーヴァの火力の大幅増強。
この四つは劇中で新たにもたらされた革新です。
つまり「僕とガンダム(AGEシステム)」の部分。
これらは、グルーデックが計画を進める段階で、彼の思惑とは別に成長した要素です。
で、その「グルーデック以外の部分」を便利にくくるキーワードがあります。
「救世主ガンダム」。
イメージ的には、グルーデックのアンバット攻撃計画=グルーデック自身の準備が7割、AGEとフリットの性能が2割、救世主要素が残りの1割といった寄与配分。
でも、これも実はある程度予測できたのではないか?
グルーデックは、ノーラでフリットの動きを実見していたはずです。
フリットの能力もAGEシステムの伸びしろも、ガンダム開発までの過程でそれなりに測れる。
このとき、フリットのメンタルのタフネスと、どこまで自分に協力的なのか?という要素が重要になってきます。
ここは、劇中でグルーデックはフリットに働きかけていますね。
では、救世主要素の具体的効果は何か?
上述しましたが、
・エウパも味方に引き入れられたこと。
・艦が面制圧能力を手に入れたこと。
・個々の通常戦力が一対一で敵と対等に戦える火力を手に入れたこと。
・フリットが対多数戦をできるパイロットに育ったこと。
以上の4つです。
これはグルーデックにとっては嬉しい結果だったと思われます。
ある程度は当て込んでいたでしょうが、いい方に最大限に触れた結果だと思われます。
グルーデックのバクチが外れたらどうなっていたのか?
ここも、実は保険がかけてあります。
・スタッフにマッドーナとコネを持つウルフを入れている
・進路にファーデーンを組み込んでいる
という対策です。
このため、ガンダムがウルフとマッドーナとつながって何らかの化学変化が起きる、まではグルーデックは計算に入れていたと思われます。フリットがパイロットとして使い物にならなかった場合、ウルフをガンダムに乗せる。
また、AGEシステムの存在を前提にすれば、もし万が一負けてもデータさえシステムに届けば目的は達成されます。
長々書いてきました。
一言で言います。
フリット編=グルーデックの「計画通り」(mニヤリ)の話
と思えてならないのです。
では、この計画をグルーデックはどこから思いついたのか?
これは、ガフランの性能データとUEの潜伏先候補の情報があれば、AGEシステムとガンダムの性能を見た段階で、ある程度の勝敗予測が立ちます。
劇中ではAGE-1のダガーがガフランの装甲を貫通しています。また、ガフランのビームはAGE-1を殺しきれていません。これらの結果も、事前に双方のデータが手に入っていれば推測が可能です。
この、彼我の「盾と矛」の情報さえあれば、ディーヴァの強化のもたらす効果まではある程度の計算ができます。
UEの規模も、潜伏先候補の情報から大体の計算が立ちます。決定打は「相手も人間だ」という情報。
人間である以上は消費するものと排泄するものが決まっています。そこから組織規模の見当がつきます。
また、ウルフとマッドーナのキャラは結構わかりやすいので、ガンダムとAGE見せれば乗ってくるだろう、ということも推測が可能です。ドンボヤージについては、上記の計算結果から「なんで4隻ほしいのか」という根拠と勝算のプレゼンが可能です。
もうひとつ、地味に馬鹿にならないのが防御面の技術進歩です。
UEの攻撃に耐えるガンダムの装甲だったり、ディーヴァの霍乱幕だったり、今回の話で登場した連合軍のビーム防御幕だったり。「当たれば即死」と「何発かは耐える」の違いは大きいです。
決定的なのがAGEシステムの存在です。
このシステムがある限り、安全な後背地と生産施設さえ確保できれば、あとは情報を届ければ届けるほど時間が味方になっていきます。
つまり、14年前に比べると、劇中の現時点は「どうにか対抗できる技術が出揃ってきている状況」です。
ただ各要素がバラバラで、自然に糾合される可能性はとても低い。また、連邦がUEについて隠蔽しようとしている以上、ほっとくとこの状況自体が潰される可能性がある。だから、パズルのバラバラのピースを誰かが集め、実地で運用しつつ調整してやる必要があります。
それはグルーデックにしか出来ない仕事です。
連邦やUEが手を打ってしまう前に動く必要があります。
もしかすると、ノーラへのUEの襲撃自体にもグルーデックが何か作用していた、と邪推する余地すらあります。
恐らくは逆で、UEがきそうだからフリットをたきつけていたのでしょうが。
こうしたことをまとめに付け加えると
14年の月日でUEに関する情報が出揃い、こちらの技術も進歩したので、計画の前提が整った
となります。
だから、グルーデックは動いた。
ここで「世代交代」と「フリットが背骨」「2期にグルーデックが不在」「救世主」といったキーワードが絡んできます。また、グルーデックが2期に出てこない?理由や、1期で繰り返し描かれたフリットとグルーデックの対比構造も絡んできます。
対UE反攻を計画していたのは上記のようにグルーデックなのですが、その計画の実現の形を規定し、当初の予定以上に良い方向に押し切ったのはフリットとAGEシステム(ガンダム)です。
つまり、「救世主ガンダム」。
だから最初のタイトルが「救世主ガンダム」で、この物語の主役機がガンダムでなければならなかった。
そう考えるとしっくりきます。
さて、グルーデックはこの計画で全て出し切っています。
このフリット編で恐らく死ぬのでしょう。
死ぬ代わりに、彼は事業の志をフリットに託していくのではないでしょうか。
フリットがそれを継承するに足るパートナーに成長していく過程は、かなり入念に描かれてきました。
第一話で、フリットの母は「AGEシステムならどうにかしてくれる」という意味のことを言い残して死にます。
フリット編で、グルーデックがどう「どうにかする」のか、明確な雛形を作りました。
そういう、先人たちが作って遺した道筋をフリットたちが辿り、積み重ねて成長していく。
それがガンダムAGEのテーマなのではないでしょうか。
今回、敵側視点で「弱い人類」という言い方が登場します。
また、ライバルキャラのデシルは幼体時点で高い次元で完成された天才として描かれています。
してみれば、ガンダムAGEとは
救世主(成長+絆 がもたらす進化) VS あらかじめ完成されたもの
という構図の物語である、といえます。
AGEという単語に託された意味は年月の経過であり、それに伴う個々人の成長、そして人間の交わりの成長、といった様々なものです。
そのAGEの結果として、救世主の種子に過ぎなかったガンダムが本当に救世主になっていく。
このあたりが、ガンダムAGEという作品に通底するテーマなのではないでしょうか。
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コメント
>フリット編=グルーデックの「計画通り」(mニヤリ)の話
実は私はその先まで描かれると思って(期待して)います。
グルーデックは一点、クルーやフリットに隠したままにしていることがありますね。
UEが人間であるということです。次回、これがネタバレするはずです。(ユリンがUEにいるので)
当然、グルーデックは相手が人間だろうが、UEがやってきたことを考えれば倒すべき敵だ、となるわけです。しかし、フリットは少なからず動揺するでしょう。
※だからこそグルーデックは隠しているわけで‥
ここでの葛藤がフリット編のキモだと思うんですね。グルーデックというキャラクター自体がそのための仕掛けと言っても過言では無いと思います。
AGEという作品が子供に向けられているということの意味がここにあります。
子供VS大人、理想VS現実 というテーマを内包していますからね。
…ということを来週か再来週、したり顔でブログに書き込み予定www
うまく描いてくれることを期待するばかりです。
ゼノタ #- | URL
2012/01/09 13:42 | edit
ああああああああその点ありましたね!!!
巧妙に温度差も描き分けられてる。
補足すると、UEは人類を根絶やしにする戦争は仕掛けてきてないけど、グルーデックはテロリスト(UE)は根絶やしにしろというスタンスでいそうです。
話し合って分かり合える方向に希望を持ってるフリットと
殺し合いしかねーだろ、のグルーデックの違いでもある。
・・・・AGEシステムの行き着く先は逆シャアの光?w
早速コメントありがとうございます。
来週が怖いような、楽しみなような。
さわK #- | URL
2012/01/09 15:01 | edit
>巧妙に温度差も描き分けられてる。
そこですね、一番のポイントは。
>UEは人類を根絶やしにする戦争は仕掛けてきてないけど、グルーデックはテロリスト(UE)は根絶やしにしろというスタンスでいそうです。
確かにUEは地球種を蔑視している割には本気で潰しにきていないような印象も受けますね。この辺、地球連邦が隠し事をしていることとも関係があるのでしょうか。
>来週が怖いような、楽しみなような。
全くです。難しいのはまだ2世代分話があるので、ここで単純な結論は出せないということ。バッドエンド気味になる可能性は充分にありえます。
この点、どう描くのか楽しみ半分、不安半分ですね。
ゼノタ #- | URL
2012/01/09 18:44 | edit
8話をじっくり見たんですがやばいですね。
最初から「この人はここまで知っててこう考えてるよ」みたいなのをかなり織り込んでる。温度差ホントうまいです。
また、ゼノタ様がおっしゃってた理想と現実の問題を踏まえると、タイタスという機体の意味も見えてきました。あとはUEの意図かなぁ。
「失われた技術」とか言われてるから、大戦期に外宇宙にいってた部隊の残党とかなのかもしれませんね。
バッドエンドといえば、母艦沈む&フリット編の登場人物ほとんど死ぬ、という展開がきそうですね。3部構成であることを踏まえても、フリット編は独立した章として綺麗にまとめ切れそう。
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