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逃避行、ふたり (後)  【なんちゃってまどマギSS】  

まどかマギカのまどほむSSの続きです。
まどかに手を引かれ、「ここじゃないどこか」へ逃げ出した暁美ほむら。

走り出すふたりを、一週間も早く襲来したワルプルギスの夜が追う。
まどかはそれでも、いつもと変わらぬ笑みを浮かべ続ける。

ふたりの走る先に、希望はあるのか―?


※イメージイラストを描いていただけると、ソレはとっても嬉しいな、って。
(こちらとPixivで掲載させていただきます)



逃避行、ふたり(後)



雨はもう、やんでいた。

あれから、どのくらい経ったのだろう。
私たちは峠のままだ。
風見野に向かって走り出す、その夢の中のまま。

違う。

彼女が、夢の中のまま。
私は、冷えていく身体を風に任せている。

いや。
ぬくもりは、ある。この両手、いっぱいに。
でも・・・
このぬくもりは、赤い血だ。まどかの命、そのものだ。

まどかの血は、止まらない。
両手で懸命に抑えても、あとから、あとから溢れてくる。
まどかの命が、私の手の中から漏れていく。
私の幸せも、まどかの夢も。



一瞬だった。
どうして、気づけなかったのだろう?
まどかの走るリズムが、あの刹那に乱れていたのに。
目を上げていれば、まどかの見ているものが見えていたはずなのに。

私は気づけなくて、まどかだけが気づいていた。
突き飛ばされて、風を受けて。
振り向いて、まどかを貫く標識を見て。
はじめて、気づいた。

世界のおもちゃ箱をひっくり返したように、狂った風の中。
私は、また、まどかに守られていた。





「・・・ほむら、ちゃん?ダメ、だよ?」
そっと乗せられた、手。
見上げる。まどかが微笑んでいる。
ゆっくり、かぶりを振る。

「私を治したら、それ、濁り切っちゃうんでしょ?ダメ・・・だよ。」
「・・・!
 ごめんなさい・・・傷を治す練習、もっとしていれば・・・」

「ううん。

 ・・・こっちこそ、ごめんね?」



「どうして!?どうして謝るの?」

どうして?

「私が弱くて。うそつきで。
 一緒にいるっ・・・言ったのに、ここまで・・・しか、ついてきてあげら・・・なくて。
 ほむらちゃん・・・ずっとひとりぼっちだった・・・のに。ごめんね。
 ほむらちゃ・・・みた・・・な・・・強くて・・・かっこい・・・人に・・・わた・・・が・・・背負わせ・・・ゃった・・・のに。」

どうして、そんな優しい目で、私を見るの?

「・・・ごめんね。ほむらちゃんの・・・思いに・・・答え切れなくて。」

ちがうよ!謝るのは・・・あなたじゃない!

「もっと強かったら・・・ほむらちゃん・・・と・・・ずっと一緒・・・いられた・・・に。
 ほむらちゃん・・・さみし・・・がらせ・・・りも・・・なかった・・・のに。
 また・・・おにもつで・・・ごめん・・・ね。」

どうして?
どうして、あなたはそんなに優しい目ができるの?

守れなかったのは、私の方だよ?


「そんなことない!そんなこと・・・」
「ほむらちゃん・・・背負・・・もの、私も・・・一緒・・・背負い・・・たかった・・・の
 わた・・・の・・・せい・・・から。」

ちがう!ちがうよ!
まどか、まだ気にしているの?違うって最初から言っているのに!!!!

「まどか!もういい!今治すから!!もう喋らないで!!!」
「ううん・・・ほむらちゃん・・・聞いて?」

手が握られる。まどかの顔はもう真っ白だ。
でも。まどかは笑っている。いつもと変わらない、あの優しい顔で。

「もう一回・・・笑って・・・見せ・・・くれな・・・かな?
 ほむらちゃんの笑顔・・・とっても・・・素敵だ・・・から。」

風が、やけに冷たかった。

「ありがとう・・・
 やっぱり・・・私の大好きなほむらちゃんだ・・・。まぶし・・・い・・・よ・・・。
 あり・・・がとう・・・とも・・・だちでいて・・・れて・・・
 しあ・・・せになってね・・・わたしの・・・ぶ・・・も。」

ちがうよ!まぶしかったのは・・・

おずおずと、伸ばされた手が頬に触れる。
冷たい・・・けど、あたたかい。
そのまま、前髪にかかり


「わたしは、いつも、ほむらちゃんと・・・」

幼い日のように、撫でられていた。
こびりついた笑顔も、溶けていくような。
束の間の、永遠の、心地よさの中で

「いっしょ・・・だよ・・・どこに・・・いても・・・いっし・・・
 ・・・だか・・・ら・・・もう・・・だい・・・じょ・・・」



ぬくもりを残したまま、
言葉の終わりを言わないままに、

私の膝と手の中で、まどかは、ここから、いなくなった。

私は、何もできなかった。
笑顔だけが、私の顔に張り付き続けていた。
きっと、私もまどかと同じように笑っていたはずだ。
そうするしか、できないもの。





また、雨が降ってきた。
漏れ出す血が雨に混じっていく。
まどかは微笑んでいた。
今にも、目を覚ましそうなのに。

一緒に宿題をしていたあの土曜日の昼下がりみたいに、また照れ笑いをして目覚めそうなのに。
あの、昼下がり。

そのあと、ふたりでミックスサンド食べたね。
「おいしーね!!!」
そう言っていたあなたの笑顔。いまと同じ笑顔。分かち合った笑顔。
同じ、ぬくもり。一緒だったぬくもり。

今も、ほとんど同じ、なのに。

通学路のせせらぎをふたりで聞いていた、あの木漏れ日のように。
奮発したイチゴケーキを分け合った、あの空気のままに。

同じ夢を見ているの?
私とふたり、丘を駆け下りた先の夢を。
だって、だって。

あなたは、変わらず笑っているのだもの。同じ香りがするのだもの。
私、そんなに輝いてないよ?
本当にまぶしかったのは、あなたの方だよ?

眠り姫の白い頬。
いたずらっぽく笑って、頬ずりしてきたよね。
今もこんなに柔らかいのに。あのときみたいに暖かいのに。

こんなに・・・
あれ?
なに?涙が止まらない・・・頬に、私の雨が落ちている。
私は、泣いているようだ。

笑っていたはずなのに。
笑ってなくちゃ、いけないのに。

まどかの髪を整えてあげたいのに。顔の血を拭ってあげたいのに。
まどかが見ているのに。

どんどん、私でぐしゃぐしゃになっていく。ごめんね。
まどかの微笑みと私の嗚咽の中で、私も、戻らない日の夢を見る。

―逃げてもいいんだよ?私との約束なら、私が許せば大丈夫だよね!
―私は、どこにいても、どんなときでも、ともだちだから。
―ほむらちゃんと出会えたことは、私の誇りだよ?

鹿目まどか。
私のままの私を見つけてくれた、大事な友達。
私よりも私を信じてくれた、たったひとりの友達。

笑ってなくちゃいけないのに。
こんなうめき声なんか、聞かせたくないのに。ごめんね。
ごめんね。笑顔、くずれちゃう。

手は、まだ、暖かい。
あなたはまだ、そこにいるの?
目をキラキラ輝かせて、今も私を見ていてくれているの?

ごめんね。

「・・・ごめんね。
 ごめんね。ごめんね。ごめんね。ごめんね。ごめんね。ごめんね。」

笑ってなくちゃ、いけないのに。
まどかを抱きしめたまま、無限の思い出の中で。
摺り寄せる頬に残る、まどかの温もりの中で。
めくるめく、あなたの笑顔の中で。

ごめんねだけが、止まらなかった。
言い続けてないと、切れてしまう。糸が。



でも。


いっぱいいっぱいいっぱい、ごめんねを言った後で、顔を上げたとき。
ふたりの時間を、心の奥の奥まで染み込ませたとき。

「・・・ありがとう。」
笑顔の続きが、漏れ出していた。

私は。


まどかは、まだ笑っている。
言った私の気持ち、もうばれちゃってるかな?
まどかは、何でも見透かすものね。
そうでしょう?あなたは笑っているのだもの。

だから、もう一度、

「ごめんね。」

私やっぱり、あなたを置いては逃げられない。


私は。
まだ、あなたに何も返していないもの。





どちらの町も見下ろせる場所に、まどかを埋めた。
まどかは最後まで笑っていた。幸せな夢を見続けているのかな?
ごめんね。こんな冷たいところに。


目の前いっぱいには、白く輝く風見野の町。
この手の中のぬくもりといっしょに、駆け下りた先にも、未来がある。

海からの風が、温かく身体を吹きぬける。
かすかに、まどかの残り香を乗せたそよぎだ。

―逃げてもいいんだよ?私との約束なら、私が許せば大丈夫だよね!
―私は、どこにいても、どんなときでも、ともだちだから。

でも。


「ごめんね。」

今の私は、みんなを見捨てるって言ったときのあなたと同じ顔をしているのかな?
許してね。私の心をここに置いていくから。
ずっと一緒に、終わらない夢を見よう?
だから、ちょっとだけ待っていてね。

手を取って逃げてくれたこのぬくもりで、私は戦えるから。
あなたのまぶしい背中も、微笑みも、まなざしも、全部覚えているから。
どんなに心が冷え切っても、私を知らないあなたに会っても、もう大丈夫だよ?

だから。

手の中の紫。禍々しい魂の光だ。
あなたは、きれいだと言ってくれたけど。

髪をなびかせて、くるっと振り返る。
このターン、あなたは大好きだったよね。きれいに決まったかな?
また、手を叩いてくれているのかな?

振り返った先も、やっぱり、救いのない世界。
ヤツが荒れ狂う見滝原、紫の牢獄。

だけど。
見ていてね。私はいくよ。
もっと強くなって、全部終わらせてくる。
本当に輝く私になって、あなたのところに、また、迎えに戻ってくるから。
そのときは、一緒にどこまでも歩いていこう?
今度は、私のぬくもりであなたを暖めてみせるから。


だから。
この右手にもう一度、無情の砂時計を握り締める。
ヤツの笑い声が覆う壊れた世界に、一歩、踏み出す。
輝くあなたの、終わらない夢を抱いて。


(了)


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