戦後15年世代の「共通の敵」は何か? 【機動新世紀ガンダムX感想】 
2012/07/06 Fri. 05:02 [edit]
後悔はない(キリッ)なのですが、じゃあそんなにガンダム見てたっけな?とふと思い至りました。
一応全シリーズなんとなく見てますが、初代、G、W、0080、ターンエーは見てない回があったりします。
Xについてはイチオシにしている知人がいて、私も結構好きでした。15年ほど前にビデオ借りて全話見てます。
ただZZを去年徹底的に見て「あーXがやりたかったことって実はZZが全部やっちゃってるよな」と思ってました。
実際ちょっと見返すとテンポが悪かったりくどかったり、絵の傾向が今と違ってたりで垢抜けないイメージがあります。
でも、AGEを歴代ガンダムでトップ、と言い切るからには見返しておきたいなとも思います(ターンエーとかWも)。
そんなときに、魔法少女きょうこ☆マギカXの動画に引き寄せられるように出会う。
コレはかっこいいです。下の画像でおお!と思ったらぜひ見てみてください。
画像クリックで飛べます。

ガンダムXから肩肘張ったセリフ取っ払って今の技術で再現すると、やっぱ凄絶なまでにカッコイイ。
ということで、ガンダムXの戦闘ダイジェストをなんとなーく見てみました。
そうすると・・・
フリーデン一派とフロスト兄弟の地を這う戦いの裏に潜む、彼らが本当に討つべき相手が見えてきました。
ということで今回はガンダムXの考察記事です。
ガンダムXのテーマについて、私なりに答えが出たつもりなので書いてみます。
全話見返したわけではありません。ツッコミやご指摘あったらお願いします。
ガンダムXを見返すと、第7次宇宙戦争からA.W.0015まで共通する「亡霊」がいます。
Xのテーマ「ニュータイプという幻想」と表裏にあたる存在でもあります。
亡霊の正体、それは
連邦軍のニュータイプ運用思想
つまり、
1:ニュータイプを一括して囲い込み
2:サテライトシステム、フラッシュシステム、戦略兵器ガンダムに押し込め
3:世界戦略の決定力として使う
という発想です。
システムとして機能してさえいればいいので、押し込める際に連邦軍は相当非人道的な手段を使っています。
ここでは、仮に「GXの傘」と呼ぶことにします。
コロニー落としのきっかけになった第7次宇宙戦争と、その余韻であるガンダムX本編中の戦闘を見ていると、ガンダムX(と後継機のDX)が常に決定的兵器として機能しています。
サテライトキャノンを防ぐ手段が事実上存在しないからです。
劇中で、サテライトキャノンは
1:月が見えていない状況
2:パイロットが発射を思いとどまる
3:同等の威力のサテライトランチャーをぶつける
4:MS隊をぶつけて撃たせないようにする
という形でしか防げていません。
1は一見有効ですが、サテライトキャノンの射程を考えると事実上地球圏全域に逃げ場がありません。
2はSEEDみたいにパイロットが都合よく説得できればどうにかなるかもしれません。
NT同士の感応を使っても可能です。
ただし、劇中ではガロードの良心以外の理由で発射が躊躇されたことはありません。従って敵側から「パイロットに干渉して」サテライトキャノンの発射を阻止するのは相当難しいです。
また、干渉する距離まで干渉するものをどうやって近づけるか、という致命的な問題があります。
また、3の「同等の威力」は月面のプラントからの電波をほぼ同量、2機が浴びる、という極めて異常な状況下で一度だけ発生しています。これは、月面基地を単一勢力が占領している場合、かつ、その勢力同士で同士討ちでもおきない限りまず発生しない状況です。
では4はどうか?
本編を見ていると、通常の量産機でガンダムシリーズに対抗するのはまず無理です。新連邦軍が空母+30機規模のMS隊で複数回フリーデン討伐を試みていますが、フロスト兄弟の援護がない場合ワンサイドゲームで返り討ちにあっています。革命軍のクラウダが多少まともにやりあえるぐらいです。
また、月面基地周辺の戦闘やLシステム発動時の戦闘は、ニュータイプが操ったときのGビットの圧倒的なまでの強さを示しています。
ではベルティゴはどうか?確かに強いのですが、ジャミルにもガロードにも短時間でパターンを見切られて敗れてます。
連邦軍がガンダムに乗せていたであろうレベルのパイロット相手には、絶対的な有利にはなりえません。
なお、ベルティゴが最初に戦場で戦った可能性が最も高いガンダムはエアマスターです(※)。
高機動機にウィッツ並のパイロットが乗っているはずなので、相手がビットを初見という有利があっても仕留めきるのは困難だったと思われます。
※GX9900が投入されたのは大戦最後期のコロニー落とし直前。レオパルドとエアマスターの投入時期は不明。
エアマスターがXより先だったのは判明しているが、レオパルドの投入時期が不明。
用途を考えると敵陣により近い場所で戦うのはエアマスターのはず。
レオパルドがエアマスターより先に投入されていない限り、ベルティゴと最初に戦ったのはエアマスターのはず。
こうして見てくると、ガンダムX冒頭の第7次宇宙戦争最終盤の「フラッシュシステムとサテライトシステムを最大限に駆使したガンダム部隊」の意味が見えてきます。
出された時点で、革命軍はもう打つ手がないのです。
コロニーレーザー?
ギリギリまで気取られずに先制しない限り、サテライトキャノンに撃ち負けます。
GXはコロニーレーザーをよけられるけど、GXのサテライトキャノンはコロニーレーザーを一撃で破壊できます。
同様にパトゥーリアなどのMAも分が悪いです。
フォートセバーンの戦闘でわかるように、ビットMSもちに寄られたらまず負けます。
また、そもそも絶対的な射程で負けます。
仮に乱戦に持ち込んでも、ビットMS隊をおさえるのにとんでもない数の通常戦力が必要になります。
本編を見ている限り、1セット12機のビットMS隊を拘束するだけでも50機程度は必要でしょう。
もちろん連邦軍には他の通常戦力もいます。対ガンダムだけに戦力を割くわけにも行きません。
となると革命軍はベルティゴやフェブラルなどのNT用MSを出すしかありませんが、NTとMSの力でよっぽど圧倒していない限り、フラッシュシステム相手には効率が非常に悪くなります。
ビットMSは複数機を一人で扱えるのに対しベルティゴは1機に一人が乗らなければならず、ビットは耐久性がビットMSに大幅に劣るからです。
じゃあ大本の月面のマイクロプラント基地を落とそう!ともいかないのは、ザイデルの挑戦が何度も失敗していることが示しています。
となると、コロニーレーザーでプラントを焼き払うか、月面にコロニーを落とすぐらいしか手がなくなります。
でも、ザイデルは本編中ではそこまで思い切るには至りませんでした。
この場合、「サテライトシステムを自軍でも使おう。ウェヒヒヒヒ」という欲が最大の敵になります。
このように、フラッシュシステムを持ったガンダムにサテライトキャノンが組み合わされ、それを運用できるNTの数が揃ってしまった時点で、革命軍はほとんど打つ手がなくなります。
いや、手はあることはあります。不可避の必殺の手が。
サテライトキャノンでも壊しきれないような弾丸を、連邦軍にとって要になる場所に叩き込めばいい。
そうです。コロニー落としです。
史実では革命軍がコロニー落としを企図したのが先で、それに呼応して連邦軍がサテライトキャノン装備のGX9900を投入しています。
でも、遅かれ早かれ革命軍はコロニーを落とさざるを得なかったのではないでしょうか?
劇中でのガンダムとNTの凶悪な戦闘力を見ていると、それ以外に打つ手が思いつきません。
こうして見てくると、連邦のNT運用には先見の明があったことがわかります。
「地球圏のどこでも一瞬で制圧できる移動砲台を作り、その防衛と運用にNTを集中投入する」、GXの傘です。
革命軍はNTを戦術レベルの兵器としてしか見ていませんでしたが、連邦軍は世界全体を支配する傘としてNTを運用しています。月面にビットMSとNTで重厚に守らせた基地を作り、ガンダムXをあの性能で作り上げた以上、最初から明確な運用思想があったはずです。
ポイントは、個々の技術レベル、MSの戦闘力、NTの数と質では恐らく革命軍の方が相当上だということです。
31話で、旧式のオクト・エイプが大気圏内での空戦でフロスト兄弟のガンダムとバリエント相手に善戦しています。バリエントなんて空戦用の新型なのに。
また、クラウダはエスタルド戦以降に投入されたガンダムシリーズと互角に戦えています。
通常戦力や通常のNT用MSで殴りあう分には、革命軍の方が有利です。
こうした悪条件を全て逆転できてしまうのが、GXの傘です。この傘がある限り、連邦軍が一方的に革命軍を押し込めます。
こうしてみると、革命軍は連邦軍のNT戦ドクトリンに敗れたことがわかります。
NT戦ドクトリン、つまり、「NT、ルナチタニウム合金、ビット、エネルギープラントといったバラバラのパーツをひとつの戦略兵器として世界地図に組み込む」という発想の勝利です。革命軍も連邦軍も非人道的なことをやらかしてますが、連邦は世界戦略の中での明確な目的があるぶん、効率的かつ狡猾にできます。
言い換えると、革命軍は技術やリソースが豊富にあったけど無駄打ちしてるうちに集中投入した連邦軍に負けた、となります。
こうしてみると、双方のNTの数の比率もよくできています。
革命軍がライラック作戦時に投入したNTはベルティゴの5人、パトゥーリア用の人員がいたとして+1、ランスローを入れてもう+1の合計7人です。
連邦軍が使っていたであろうNTは5人。ガンダム3機にLシステムにDOMEです。
どちらも他にも多数いるのかもですが、劇中で提示されている7対5という数量比は納得です。
また、NTを人間のままパイロットとして使っているぶん、革命軍の方がNTに対して遠慮があります。
これはNTが希望である、という彼らの思想とも関係しているように思います。
一方の連邦軍は遠慮なくNTを道具にしきっている感があります。
カテゴリーFにしてもNTにしても(恐らくは人間も)完全に道具として見下し、戦争のために運用する。
ブラッドマンなんかそんな感じですよね。だから、連邦の用兵思想には「NTが牙をむく可能性」への対策がまるまる欠落しています。
この運用思想を前提にすると、カテゴリーFが何で不要なのかが見えてきます。
フロスト兄弟は確かに便利で強いのですが、フラッシュシステムをもちサテライトキャノンを撃ちまくるガンダムたちの前では明らかに決定力が劣ります。そもそも戦略レベルでの制圧力がGXに比べるとお話になりません。
そうです。カテゴリーFは「つなぎ」に過ぎないのです。何のための?
これは新連邦の行動を見ると見えてきます。
Lシステムの引き上げ、NTの研究、フラッシュシステムを持ったMSの開発、DXの実験・・・
そうです。フラッシュシステムもちMSに守られたGXの傘の再現です。
上で見てきたように、このシステムが連邦が世界を支配した力の根源です。
GXの傘思想のために一見便利っぽいけど、所詮ニセモノはニセモノでしかない。
役に立たちそうで実は全く使えないのがカテゴリーF。兄弟のあの性格じゃそりゃ蔑視されるわ。
そして、だからこそ双子は世界そのものを否定して、やり直す必要が出てくる。
もっとも、新連邦自体もこの発想をただなぞっていただけで、使い方には効率の悪い部分があります。
たとえば対ガンダム戦や対NT戦のノウハウは、新連邦軍には明らかに残っていません。少なすぎる戦力で挑んで何度も無駄撃ちしています。
GXの傘を発想した人間(集団)も、戦後15年の間に死に絶え、ノウハウも断片的にしか残らなかったのではないでしょうか。
生き残っていたとしても、フロスト兄弟、ドーラット博士、革命軍の地上工作員あたりが可及的速やかに消しにかかるはずです。革命軍にとっては脅威に直結するし、フロスト兄弟にとっては自分たちを否定する思想の根源そのものです。
ただし、話を作った人も、恐らくそこまでは考えていなかったものと思われます。
というのが、この思想を生み出した個人なり集団が設定されていれば、彼(ら)はガンダムXのラスボスにふさわしい存在になれるからです。わかりやすく、作劇上でも便利なことこの上ない。設定しない理由がありません。
ガンダムXの全編を通じ、この思想を前提にしたNTの使い方がジャミルとティファに敵対しています。
勿論それだけではなく、NTへの幻想や過剰な期待も劇中では描かれています。
ただ、最大の敵、といえる程度の比率を占めており、この理屈で連邦軍の行動が説明できるのは事実です。
劇中の悲劇のかなりも、この思想を前提にすると説明できます。
Dナビにしても「連邦軍のやってることに比べればかわいいものさ」で済みます。
GX9900の存在の前提になった運用思想だから、カトックがいう「15年目の亡霊」の実体とも言えます。
また、GXの傘を突きつけられる限り、革命軍は思い切った手を打たざるを得なくなります。
GXの傘こそが、「くりかえしちゃいけない過ち」の火種そのものの力です。
また、ガンダムXの最後は奇しくもGXの傘を背負ったもの同士の対決です。
この対決により、劇中で「(禍々しい)力の象徴」だった月が、ラストで、いつもそこにある「ただの月」に戻りました。
ということで
「戦争によって作られたNT運用思想」と「ソレが正義にされた状況」こそがガンダムXの本当の敵だったんだ!
と提唱しておきます。
【おまけ】
「ガンダムX 感想」で検索して見つけた面白かった考察
静かなる細き声(べっちゃん さま)
ジオンの残業 (くっきーもんすたー さま)
【皆様へお願い】
最後までお読み下さってありがとうございました。
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