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名人伝 【なんちゃってまどマギSS】  

書いてるような状況じゃないんですが、なんか下りてきちゃったんで。


夏休み。
―スランプに押しつぶされそうな閉塞の中、「俺」は一人の少女と出会う―


誰の話かはあえて言いません。でもまどマギです。
「いつ」の「だれ」が出てくるのか、推理しながら読んでいただければ嬉しいかも。



名人伝



おもい。
陽炎が。道の白が。空の青が。
そして、夏が。

同じ道が、気持ちひとつでこうも違って見えるのか。
学校へと向かう道。
今日は登校日じゃない。練習の日でもない。
でも、歩く。
練習をしていないと、弓を引いていないと、こぼれてしまいそうだから。

あるときから、矢が当たらなくなった。


―神童。
そう言われていた。
何も考えなくても、面白いほど矢が当たった。
手をギリギリまで引き、フッと離す。
手から離れた一筋が、白に吸い込まれていく。
その光景が好きだった。


なのに。
当たらなくなった。

的に当てられない弓に、価値があるのか?
笑いがこみ上げる。笑う分だけ悲しくなる。
エース。キャプテン。全部この手についてきた称号だ。
今となってはからっぽの、むなしい輝き。

「練習は裏切らない」
「信じてますから」
「大丈夫です、今なんてスランプです」
声と思い出が飛び回る。俺も信じていた。

ひたすら弓を引き続けていれば、またこの手に何かが宿ると。
でも。

ひくほどに、うつほどに。的が遠く小さくなる。
自分がまっすぐ立っているのか、足がちゃんと開いているのか、わからなくなる。
鏡を見ても、基本の姿勢に戻ってみても。
瞑想をしてみても。



この道は何度往復したのだろう。
今日という日も、いつ、8月の6日になってしまっていたのだろう。


突然、金切り声。
「どろぼー!ひったくり!だれかー!」
若い女性が叫んでいる。バイクが一台、すごい勢いで走ってくる。

飛びのく。ぶわっと風が顔を打つ。
呆然、何もできなかった、目、だけが。

―追う。バイクの先、そこに・・・・
女の子!高校生ぐらいの子だ。棒立ちなのか動けないでいる。
バイクはそのまま駆け抜けようとして


そこで、見た。
かげろうの中にいるかのように、ひどくゆっくりとした時間の中で
少女が手を上げ、構える。

確かに見えた。
少女からピンク色の焔のようなものが立ち上り、確かに、その子は

弓を引いていた。


タァン!と小気味良い音がした。

男が、ふわりと舞い上がっていた。


次に気がついたとき、バイクは横倒しになっていて、バイクの男は近くで倒れていた。
外傷はない。気を失っているようで、近くのガタイのいい大学生が駆け寄って取り押さえ、スマホを気ぜわしく動かしていた。


俺は
スタスタと歩き去ろうとする女子高生から目が離せなかった。
駆け寄って呼び止める。

「なに?」
くるりと振り向いたその子は、ぞっとするほどの美人。

でも。
そんなことより。
その左手には、なにもなかった。
彼女は右手にカバンをもっているだけだ。


「あの・・・えっと・・・
 どうすれば矢が当たるんだ!?」
「矢?」
彼女は少し怪訝そうな顔をする。

「そうだよ!さっきみたいに力強い矢、どうすれば撃てるんだ?」

後で考えるとバカみたいな話だ。
かわいい女の子を見かけて、見境なくナンパしてしまったマヌケそのものじゃないかと、自分でも思う。
彼女は弓も矢も持っていない、ただの女子高生だったのだから。


でも、聞かずにはいられなかった。口が勝手に動いていた。
「矢を放ったじゃないか!この目で見た。矢が当たったから、あの男が吹っ飛んだ!」
「・・・そう。」
「そうだよ!ウソなもんか!弓を撃っていたじゃないか!
         燃え上がるみたいにピンクに輝いて!」
一瞬、彼女が何かを言いかける。眠そうな目が急に光を帯びて、じっとこちらを見てくる。

すごくかわいい・・・とか思う前に、その目に射すくめられていた。

「・・・どうすれば、そんなことができるんだ!?
 どうすれば、君みたいに強くなれるんだ?」
振り絞るように、声が出る。俺の中の俺じゃない何かが口を突き動かす。

少女はしばらく無言で、ちょっと困った顔になる。
「私は強くなんかないわ。
        

          ・・・でも
 
 ひとりじゃないから、なのかもしれない」

「へ?なんだよ・・・ソレ!!!」
バカにしているのか?

少女はそんな俺を見て穏やかな顔になり、ひどくおかしそうにクスクスと笑った。

「いつかわかるときがくるわ。 がんばってね」
なんだよ!と思ったときには彼女は俺の横を通り過ぎていて、ふわっと黒髪がなびいて―
ふりむいたら、


そこには、誰もいなかった。
やがて、夏の風としぶといセミの声が、思い出したように俺の頬を打っていった。


―あなたは一人じゃない。それを忘れなければいい―

彼女が本当にそう言っていたのかも、よくわからない。
すれ違いざまにいわれた気もするし、全てが夢だったようにも思える。
彼女のいた痕跡なんて、どこにもなかったのだから。
誰も彼女を見ていなかった。
あのときのひったくりは、ただ運転を誤って転倒しただけということになっていた。


―では、俺は何を見たのか?


その意味は、一年たった今ならわかる気がする。
俺の目の先28メートル、丸い的がある。


限りなく小さくて、揺らめいていた的。
でも、今は――

止まって見える。とても大きく見える。
あの的なら、当たる。
俺は落ち着いて当てればいいだけだ。


名人。
あの少女は紛れもない達人だった。
彼女が何をしたのか、今の俺は知っている。
「不射之射」という、伝説の名人が使っていたとされる、無手の技だ。
弓を極限まで極めると、弓と矢がなくても矢を撃てるようになる。

その境地が、「不射之射」。
彼女はそのレベルの達人だったのだ。

高みを目指し、とてつもない量の努力を重ねたのに違いない。
だから、強さを求める俺のことがおかしくてしょうがなかったのだ。
彼女にも恐らく、そういう無邪気にもがいた時期があったのだろうから。

おかしくてあわれんでくれて、少しだけコツを教えてくれた。

―ひとりじゃ、ない。

そう。俺が当てれば、俺らが勝てる。
エースの俺の後ろには、みんながいるのだから。
この矢は俺だけのものじゃない、俺と大事な人たちをつなぐ絆が託された矢だ。

ここで当てれば、次は全国。

彼女もきっと、仲間や、名誉や、抱えきれないほどの大事なものを背負って戦っていたのだろう。
どこの年鑑にも彼女の姿は見出せなかったけど。
でも。表には出ないけど相伝の技を守っている流派も沢山ある。

俺はそういう、決して表に出ることのない真のチャンピオンと、一瞬だけ交わった。
あのときから背中が少しずつ軽くなって、そのぶん弓も軽くなっていった。
練習の量も気がついたら倍以上に増えていたけど、なぜか心地よかった。
そして、的がどんどん近くなっていった。


閉じた目を開く。
大きく息を吸う。
風が頬を打つ。ジメっぽさを乗せているけど、どこか懐かしい風。

いっぱいまで引き絞った右手を、そっと離す。


タァン!

小気味良くひとつ、乾いた音がした。



(名人伝 ―焔の矢― 了)



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まとめwoネタ速neo | 2012/06/26 01:08

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